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〇伊藤潤二の猫日記よん&むー | 伊藤潤二

このエントリーをはてなブックマークに追加 カテゴリ:コミック感想(2009発売)  »2009年04月30日 更新


ホラー漫画家・伊藤潤二氏の実録猫飼育日記漫画。

エッセイ漫画やレポート漫画にはあまり手を出さないのですが、コレは読んでみて正解。猫との日常を面白可笑しく描いた普通のエッセイ的な内容なれど、絵柄・演出がいつもの伊藤潤二。ページをめくるとうずまき人間や歩く魚が出ても違和感のない雰囲気そのままに、おぞましくも微笑ましく猫との触れ合いを描く絶妙にシュールなさじ加減。

ただ猫と戯れるシーンだけで笑わされてしまいますが、最も面白く描かれているのが奥さん(表紙参照)。
石黒亜矢子というもちろん実在の人物ですが、漫画で登場する彼女の瞳は、ほとんどのシーンで白目。突っ張った頬を強調するラインに、トレードマークであるシマシマのズボン。この奥さんの挙動が反則的に面白く、その存在感は福満しげゆき漫画の奥さん並み。普段薄幸な美少女をよく描く氏にしては奥さんに対してあまりにも酷い描きようで、案の定怒られたようです。

色々と確信犯的に描かれており笑いの耐えない本作ですが、読んでいて作者が飼い猫のよんとむーを愛していることがちゃんと伝わってくるのはさすが。猫のふとしたときの表情とかちょっとした仕草とか、ベテラン漫画家の観察眼が光っています。笑わされながら、きまぐれな猫と暮らすことの魅力も知ることが出来て、良い読後感を得られました。

一通り氏の普通の漫画を読んだ後、本作を読んでみることをおすすめします。

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2009年04月30日 | コミック感想(2009発売) | コメント 0件 | トラックバック 0件 | TOP

◎回螺 | 安倍 吉俊

このエントリーをはてなブックマークに追加 カテゴリ:コミック感想  »2009年04月25日 更新


「serial experiments lain」や「灰羽連盟」のキャラクターデザインを手がけている
イラストレーター安倍吉俊が送る、『記憶と意識』をテーマにしたダークなSF作品。

本作は「古街」「樹葬」「廃域」「白雨」の4つの物語で構成され、
内「白雨」意外の3作はオールカラー。
描き込まれた絵にはイラストレーターとしての実力が遺憾なく発揮されており、
一コマ一コマが美しいイラストのような雰囲気を持っていると同時に、
その美しいイラストが暗い物語を綴る漫画の道具としても上手く機能しています。

ギャグの中に少し鬱成分の入った前作「ニアアンダーセブン」とは打って変わって、
本作品にはギャグもなく、ただひたすらに重く陰鬱。
帯には「暗黒漫画四部作」と銘打たれており、自分で「暗黒」と言ってしまって
たいしたことなかったら恥ずかしい等と無用な心配をしていましたが、
連休明けの月曜日を1000年繰り返させられてもお釣りがでるほど確かに暗黒でした。


「樹葬」は月刊エースネクストの休刊の巻き添えを食らって連載の止まってしまった作品で、
滅び行く世界を逃げるように旅する少女の物語。
そのプロローグとなる「古街」と合わせて40ページ。
「白雨」は42ページの短編で、殺しあう2人の少女の物語。
そんなわけで136ページの長編「廃域」がこの本のメインとなっています。

「廃域」は怪物の徘徊する謎の閉鎖空間を彷徨う4人+2人の物語。
謎が謎を呼ぶ展開あり、迫力の戦闘シーンあり、衝撃の結末ありと、陰鬱で抑圧されたような
雰囲気が続くながらエピソードが一番上手くまとまっており、最も読み応えがあります。


この本で特にすばらしいと思うのがその世界観。
後書きにて本作の世界の成り立ちについてある程度ネタばらしがされていて、
その内容が暗黒な世界に深みと広がりを与える大変興味深いものとなっており、
漫画本編と補完しあって、未完の物語を抱えながらも
それは本1冊で1つの世界を作り上げているかのようです。

2625円というこの本の値段は、その世界1個の値段。
高いか安いかはあなた次第、とまとめてみます。

▼作者による回螺プロモムービー▼


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2009年04月25日 | コミック感想 | コメント 0件 | トラックバック 0件 | TOP

☆ガゴゼ | アントンシク

このエントリーをはてなブックマークに追加 カテゴリ:コミック感想  »2009年04月18日 更新

ガゴゼ 5 (5) (バーズコミックス)

アントンシク

幻冬舎コミックス

最終巻:2008/12/24



室町時代、京の都とその近隣を舞台とした妖怪わんさか伝記スペクタクル。時の将軍・足利義満の命を受けた陰陽師・土御門有盛によって力を奪われ童子の姿となった元大鬼・ガゴゼが人や妖怪達との出会いによって本当の自分に目覚めていく…といったお話。

読みやすく上手い絵で、端整でディフォルメの効いた今風の絵柄ながらこれが昔の日本描写や妖怪デザインとマッチしていて、非常に良い和の雰囲気を醸し出しています。
(顎長金髪美形キャラがオシャレに活躍する和物現代風アレンジ系とは対極)
ストーリーは人外の物が成長してが人の心を手に入れていく系と王道ですが、人の醜さも優しさも詰め込まれたエピソードが高い描写力で描かれながら妖怪バトル等適度にエンターテイメントしていてぐいぐいと物語に引き込まれます。


最終巻である5巻がとにかく急ぎ足で、伏線の回収が過不足なく行われたものの、詰め込みすぎた結果いくつかのドラマが食いつぶしあって薄くなってしまった感があるのが残念なところ。各主要キャラの思い入れを深めるエピソードをもう少し読みたかったです。しかし全体的にはよくまとまっていて、ラストもスケールの大きい妖怪+日本昔漫画に相応しい余韻あるものとなっていて、面白く読めました。

アントンシク氏の次回作は月刊少年サンデーで連載されるとのことなので、そちらも非常に楽しみです。

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2009年04月18日 | コミック感想 | コメント 0件 | トラックバック 0件 | TOP